【2026年8月第1週】決算に効いた円安と関税の還付|S&P500は史上最高値、15年ぶりの日米協調介入

2026年8月第1週の相場振り返り。決算に効いた円安と関税の還付 相場振り返り
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対象期間:2026年8月3日〜8月7日(W32)

出典:Yahoo!ファイナンス、日本経済新聞、Bloomberg、株探、yfinance、ジェトロ、各社決算短信

👉 先週(7/27〜7/31)の振り返りはこちら

今週の結論

日本株:日経平均は週間+1.93%の65,606円で、2週ぶりに反発しました。
ただし上げ方は一本調子ではありません。
月曜に−0.94%と下げたあと、水曜に+3.66%(+2,342円)と急伸して13日ぶりに66,000円台を回復し、木曜と金曜は続落しています。
TOPIXは週間+1.79%の4,074。
終値の最高値まで、あと0.66%のところまで戻してきました。

米国株:S&P500は週間+3.58%、NASDAQは+5.19%、NYダウは+2.96%と、主要3指数がそろって上昇しました。
SOX半導体指数は+9.24%と大きく戻しています。
S&P500は金曜の終値で史上最高値を更新しました。
金曜に発表された7月の米雇用統計が市場予想を大きく下回り、利上げ観測が後退したことが支えになっています。

原油・為替:WTI原油は週間−8.88%の77.15ドル。
米国とイランの和平協議が進むとの期待から、月曜と火曜で続けて5%を超える下げとなりました。
ドル円は週間−0.97%の156円68銭で、円高に振れました。
前週末の7月31日に15年ぶりの日米協調介入が実施されており、週明けに一時155円台前半まで進んだあと、いったん158円台まで戻しています。
金曜は米雇用統計を受けて再び円が買われ、156円68銭で週を終えました。

まぐ
まぐ

先週の最後に、半導体の調整が終わったんかどうか見極めたいって書いたやろ。
今週はSOXが+9.24%やから、戻したように見えるな。

チャッピー
チャッピー

そうなんよ。
ただ週足だけ見たときの話でな。
日ごとに見ると、半導体が買われた日と、それ以外が買われた日が交互に来てる。

まぐ
まぐ

先週と同じ形が続いてるってこと?

チャッピー
チャッピー

せやねん。
しかも今週は決算が重なったから、同じ日の同じ業種でも、株価が正反対に動いた会社があった。

今週の主要指数(週間騰落)

指数週間騰落終値最高値からの距離
日経平均+1.93%65,606.71−9.34%
TOPIX+1.79%4,074.93−0.66%
S&P500+3.58%7,757.64最高値を更新(8/7)
NASDAQ+5.19%26,690.62−1.49%
NYダウ+2.96%54,036.93−0.57%(8/5に最高値を更新
SOX半導体+9.24%12,356.79−15.57%
WTI原油−8.88%77.15ドル
ドル円−0.97%156円68銭

※「最高値からの距離」は終値ベースの最高値(ATH=All Time High)と比べた水準です。
今週は米国株が2つ、終値の最高値を更新しました。
S&P500は8月4日と8月7日に更新し、金曜の終値がそのまま最高値になっています。
NYダウは8月5日に54,349ドルの最高値をつけ、そこから0.57%下で週を終えました。
ザラ場の最高値は、いずれも8月5日のS&P500 7,793、NYダウ 54,744です。
日本・米国とも8月7日終値の時点で、週間騰落は7月31日終値を起点にしています。

日経平均(+1.93%)|水曜だけで2,342円上げ、13日ぶりに66,000円台

日経平均株価の日足チャート。13週・26週移動平均線つき。2026年8月3日から7日の週をハイライト

日経平均は週間+1.93%の65,606円。
2週ぶりの反発ですが、週の中では上下しています。

月曜は−0.94%(−607円)と反落しました。
前週末に日米が協調して円買い介入を実施したことが伝わり、急速に進んだ円高を警戒した売りが出た形です。
前場には日経平均の下げ幅が一時1,600円を超えました。
この日はプライム市場全体の約7割にあたる1,060銘柄が下落しています。

水曜は+3.66%(+2,342円)と急伸し、13日ぶりに66,000円台を回復しました。
前日にドイツのDAXやフランスのCAC40が最高値を更新し、米国でもNYダウとS&P500がそろって最高値をつけたことで、世界的にリスクを取る流れが東京にも波及しています。
中東の緊張が和らいで原油が急落したことも、投資家心理の改善につながりました。

この日の上げを作ったのは、ごく少数の銘柄です。
アドバンテストとソフトバンクグループの2銘柄だけで、日経平均を約1,243円押し上げました
水曜の上げ幅2,342円のうち、半分以上をこの2社が占めた計算になります。

チャートの点線は移動平均線です。
上の13週移動平均線は66,255円で、今週の終値65,606円はまだそこに届いていません。
下の26週移動平均線は61,561円で、7月末に一時60,448円まで売られたあとはこの水準を回復しています。

木曜は−0.93%、金曜は−0.12%と続落しています。
木曜は前日の急騰の反動に加えて、好決算だった米サンディスクが時間外取引で下落したことが嫌気されました。
ただしこの日、値上がり銘柄はプライム市場全体の7割を超えています
指数は下げましたが、多くの株はむしろ上がっていました。

まぐ
まぐ

水曜の上昇の2,342円のうち、半分以上が2銘柄って、先週とまったく同じ構図やな。

チャッピー
チャッピー

ほんまそれや。
今週は5日とも、指数を動かした上位2銘柄がアドバンテスト・ソフトバンクG・東京エレクトロン・ファナック・キオクシアのどれかやった。
顔ぶれが変わってない。

TOPIX(+1.79%)|終値の最高値まで、あと0.66%

TOPIXの日足チャート。2026年8月3日から7日の週をハイライト

TOPIXは週間+1.79%の4,074。
日経平均の+1.93%とほぼ同じ上げ幅ですが、最高値からの距離がまったく違います

TOPIXの終値の最高値は7月6日の4,102で、いまの水準はそこから0.66%下
ほぼ最高値圏にいます。
一方の日経平均は、6月25日につけた終値の最高値72,366円から9.34%下です。
同じ日本株の指数でも、最高値からの距離に8.7ポイントの開きがあります。

この差は、指数の作り方の違いから来ています。
日経平均は株価の高い銘柄ほど影響が大きくなるため、値がさの半導体株の下げをそのまま受けます。
TOPIXは時価総額をもとに計算するので、半導体以外の銘柄の比重が相対的に大きくなります。
6月以降に半導体株が大きく調整した分、日経平均のほうが深く沈んだ形です。

まぐ
まぐ

いつも思うけど、同じ日本株でもこんなに差が出るもんなんやな。

チャッピー
チャッピー

そうそう。
「日本株が高値圏かどうか」は、どっちの指数を見るかで答えが変わってまう。
ニュースで日経平均だけ見てたら、TOPIXが最高値目前まで戻してることには気づかへんな。

S&P500(+3.58%)|金曜の終値で史上最高値を更新

S&P500の日足チャート。2026年8月3日から7日の週をハイライト

S&P500は週間+3.58%の7,757.64で、金曜の終値がそのまま史上最高値になりました。
今週は火曜と金曜の2回、終値の最高値を更新しています。

週の前半で上げ切った形です。
月曜が+1.48%、火曜が+1.79%。
トランプ大統領がイランへの攻撃計画を撤回したことで原油が急落し、米国債の利回りも低下したことが買い材料になりました。
水曜と木曜はそれぞれ−0.17%、−0.18%と小幅に下げています。

金曜は+0.62%と反発しました。
7月の米雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比2万3,000人の減少となり、8万人程度の増加という市場予想を大きく下回ったためです。
早期の利上げ観測が後退し、金利の低下が株価を支えました。

決算も追い風でした。
S&P500採用企業のうち86%が市場予想を上回る利益を出しており、これは過去5年で最も高い比率です。
1株あたり利益は前年比29%増となっています。

まぐ
まぐ

雇用が減ったのに株が上がるって、ちょっとややこしいな。

チャッピー
チャッピー

そうやな。
いまの米国は利上げをするかどうかが焦点になってるから、景気の指標が弱いと「利上げが遠のく」と読まれて株が買われる。
景気の良し悪しより、金利の方向を見てる局面や。

NASDAQ(+5.19%)|主要3指数で最も強く、最高値まで1.49%

NASDAQの日足チャート。2026年8月3日から7日の週をハイライト

NASDAQは週間+5.19%の26,690で、主要3指数の中で最も上げました。
6月2日につけた終値の最高値27,093まで、あと1.49%のところまで戻しています。

火曜の+2.59%が効いています。
データ分析のパランティアが決算を発表し、通期の見通しを引き上げたことで大幅高となりました。
建設機械のキャタピラーも、データセンター向けの発電事業の成長が評価されて上げています。

一方で、決算に対する反応は一様ではありませんでした。
水曜は半導体のAMDが下げています。
売上高の見通しは市場予想を上回ったものの、期待には届かなかったという受け止めでした。
木曜はサンディスク、ウエスタンデジタル、データドッグなどの決算を受けた急落が相次いでいます。

まぐ
まぐ

同じハイテクでも、決算次第でばらけてるんやな。

チャッピー
チャッピー

せやな。
まとめて買われる、まとめて売られるという動き方から、1社ずつ中身を見て選ぶ動き方に変わってきてる感じがする。
これは日本株のほうでも同じことが起きてた。

NYダウ(+2.96%)|水曜まで5日続伸で最高値、木曜に464ドル安

NYダウの日足チャート。2026年8月3日から7日の週をハイライト

NYダウは週間+2.96%の54,036.93。
水曜までの5営業日で続けて上げ、8月5日に終値の最高値54,349をつけました

木曜は464ドル安と6日ぶりに反落しています。
米国とイランの協議をめぐる不透明感と原油高が重荷になりました。
英フィナンシャル・タイムズ紙が、ウォーシュFRB議長がインフレが高進すれば利上げする用意があると報じたことで、早期利上げの観測が強まったことも売りにつながっています。

金曜は+0.28%と小幅に反発しましたが、8月5日の最高値からは0.57%下の水準で週を終えました。

まぐ
まぐ

ダウは最高値を更新したのに、最高値では終わらんかったんやな。

チャッピー
チャッピー

そうやねん。
今週の週足で最高値まで戻して引けたのはS&P500だけや。
ダウは水曜が天井で、NASDAQは最高値まで1.49%残してる。
ひとくちに米国株高と言うても、中身は少しずつ違う。

SOX半導体(+9.24%)|火曜だけで+6.55%、それでも最高値からは15.57%下

SOX半導体指数の日足チャート。2026年8月3日から7日の週をハイライト

SOX半導体指数は週間+9.24%の12,356と、大きく戻しました。
前の週が−4.30%でしたから、下げた分を取り返した以上の上げです。

火曜の+6.55%が、この週の上げのほとんどを作りました。
前の週に−4.30%と下げた分を、実質1日で取り返した形です。

ただし水曜は−1.40%、木曜は+0.33%と伸びていません。
金曜は+2.56%と再び上げましたが、終値の最高値からはまだ15.57%下の水準です。
6月につけた14,634という高値からは、まだ距離があります。

週足だけを見ると半導体が戻ったように見えますが、日ごとの動きは行ったり来たりでした。
火曜に大きく上げ、水曜に下げ、木曜はほぼ横ばい、金曜に上げる。
一方向に戻り続けたわけではありません。

まぐ
まぐ

先週の宿題やった「調整が終わったんか、一度だけ戻して落ちる動きなんか」は、結局どっちなん?

チャッピー
チャッピー

それは正直まだ分からへん、というのが今週の答えやな。
週足は+9.24%でも、中身は日替わりで往復してる。
けど、上方向に切り替わったとは言いきられへん。

まぐ
まぐ

2週続けて「分からん」やな。

チャッピー
チャッピー

そこは無理に決めつけんほうがええと思う。
最高値からまだ15.57%下やし、週の中で上げた日と下げた日が交互に来てる。
戻りが続くんか、その中の一時的な戻しなんかは、もうちょっと見んと分からへんな。

WTI原油(−8.88%)|対イラン和平への期待で、月曜と火曜に急落

WTI原油の日足チャート。2026年8月3日から7日の週をハイライト

WTI原油は週間−8.88%の77.15ドルと、大きく下げました。

下げが集中したのは週の前半です。
月曜が−5.11%、火曜が−5.69%。
トランプ大統領がイランへの攻撃計画を撤回したこと、その後ベッセント財務長官やカタールの発言から和平の早期合意への期待が高まったことが材料になりました。
イランとオマーンがホルムズ海峡の航路案で合意したとの観測も伝わっています。

木曜は+2.75%と反発しました。
米国とイランの協議の先行きに不透明感が出て、週前半の下げを一部戻した形です。

週足で見れば、7月末の84.67ドルから77.15ドルまで7.5ドル下げた一週間でした。
中東情勢を材料に、6月以降つけていた高い水準からは離れています。

まぐ
まぐ

原油が下がったら株が上がるっていうのは、どういう理屈なん?

チャッピー
チャッピー

原油は多くの会社にとって仕入れコストやからな。
下がれば企業の利益が増えやすいし、物価も落ち着きやすい。
物価が落ち着けば中央銀行が利上げを急がんでもよくなる、という順番で株に効いてくる。

ドル円(−0.97%)|15年ぶりの日米協調介入が実施されていた

ドル円の日足チャート。2026年8月3日から7日の週をハイライト

ドル円は週間−0.97%の156円68銭でした。
週足の下げ幅は1円ほどですが、その中では155円台から158円台まで往復しています。

今週いちばんの出来事は、前週末の7月31日に、日本と米国が協調して円買いの為替介入を実施していたことが確定したことです。
8月3日に片山さつき財務相が実施を表明し、同日に日米で共同声明を出す方向で調整に入ったと報じられました。

日米の協調介入は、2011年の東日本大震災の直後以来15年ぶりです。
さらに円買いの介入としては、1998年のアジア通貨危機以来28年ぶりにあたります。
市場関係者の話として、規模は5兆円程度に上る可能性があると伝えられています。
円相場は7月下旬に1ドル164円に迫り、約39年8か月ぶりの円安水準になっていました。

週明けの8月3日、円は一時155円台前半まで急騰しました。
この円高を警戒した売りで、同じ日の日経平均は前場に1,600円を超えて下げています。
三井住友フィナンシャルグループやみずほフィナンシャルグループなどの銀行株、トヨタ自動車やスズキなどの自動車株が売られました。

ただし、その後は戻しています。
NY市場の終値で見ると、8月3日が157円04銭、4日が157円70銭、5日が157円80銭、6日が158円55銭。
4日続けて、いったん円高に振れたあと押し戻されて引ける形が続きました。

金曜は7月の米雇用統計が市場予想を大きく下回り、早期の利上げ観測が後退したことでドルが売られました。
ドル円はNY市場で158円39銭から156円68銭まで下げて引けています。
非農業部門の雇用者数は前月比2万3,000人の減少で、8万人増という予想を大きく外しました。
6月分も+5.7万人から+2.0万人へ下方修正されています。
平均時給は前年比+3.2%で、こちらも予想の+3.5%を下回りました。
失業率は4.1%へ0.1ポイント低下していますが、これは仕事を探す人自体が減ったこと(労働参加率の低下)が背景です。

介入があった週に、何を見ておけばいいか

介入そのものより、自分が持っている会社が円高と円安のどちらで得をするかのほうが実際的です。
海外で稼ぐ比率が高い会社は円高で利益が減りやすく、輸入や内需が中心の会社は逆になります。

それは決算短信で確かめられます。
多くの会社が、業績予想の前提とした想定為替レートを明記しているためです。
想定より円高に振れれば、その会社の利益予想は下ぶれやすくなります。
今回の決算でも、想定と実勢がどれだけ離れているかは会社ごとにかなり違いました。
具体的な数字はテーマ①で触れます。

まぐ
まぐ

先週は「介入があったらしい」までしか書けへんかったやつが、今週はっきりしたんやな。

チャッピー
チャッピー

そうやねん。
先週の時点では報道も「観測」「と伝えられた」止まりやったからな。
15年ぶり、円買いでは28年ぶりというのは、かなり大きな出来事や。

まぐ
まぐ

それやのに、週末には158円台まで戻ってたんやろ。

チャッピー
チャッピー

そこは正直なところやな。
介入で一気に155円台まで動いたあと、4日続けて押し戻されてる。
ただ効いてないと決めつけるにはまだ早い。
片山財務相は追加の介入も示唆してる。

まぐ
まぐ

持ってる株の側から見たら、どう構えといたらええんやろ。

チャッピー
チャッピー

為替を当てにいくより、手元の会社が何円を想定してるかを知っとくほうが役に立つと思うで。
想定より円高に振れた分だけ、その会社の利益予想は下ぶれやすくなる。
それは短信を見れば書いてあることやからな。

今週のテーマ①:決算資料に並んでいた「円安」と「関税」

今週は4〜6月期の決算発表が山場を迎えました。
気になった会社の決算資料をいくつか開いてみたところ、増益の理由として同じ言葉が繰り返し出てきます。
円安と、米国の関税です。

まず円安のほうは、金額がはっきり書いてあります。
多くの会社が、利益の増減を「為替でいくら、原材料でいくら」と要因ごとに分解した資料を出しているためです。

たとえばブリヂストンは、上期の調整後営業利益が前年比で463億円増えたうち、為替の寄与を+200億円と開示しています。
増益幅のおよそ4割です。
為替の影響を除くと、増益率は+20%ではなく+11%になると同社は説明しています。
TOYO TIREも、上期の営業利益に対する為替の影響を+39億円と出しています。

背景には、想定と実勢のズレがあります。
上場する主要メーカーの想定為替レートの平均は1ドル151円40銭で、調査が始まった2011年以降で最も円安の想定です。
それでも7月には実勢が164円に迫りました。
会社が置いた前提より円安が進んだぶんが、そのまま利益の上振れになった形です。

実勢がどれだけ動いたかは、決算資料に書いてあります。
リコーは4〜6月期の平均為替レートを1ドル159円45銭とし、前年同期より14円91銭の円安だったと開示しています。
15円近い差が、そのまま海外で稼ぐ会社の円建ての利益を押し上げました。

効き方は業種をまたいでも見えます。
自動車大手7社の4〜6月期は、トヨタ自動車・ホンダ・スズキの3社が過去最高益となりました。
SUBARUを除く6社が増益または黒字転換した理由として、想定レートより円安が進んだことと、関税の負担が前年同期より軽くなったことが挙げられています。

まぐ
まぐ

円安で利益が増えるのは知ってたけど、金額まで書いてあるんやな。

チャッピー
チャッピー

そうやねん。
「為替のおかげで増えた」と読者が推測するんやなくて、会社が自分で+200億円と書いてる。
探しにいけば出てくる数字や。

一方の関税は、会社によって扱いがはっきり分かれていました。
米連邦最高裁が2026年2月2日に国際緊急経済権限法(IEEPA)にもとづく関税を違法と判断し、米国際貿易裁判所が3月4日に還付を命じています。
対象となる徴収額は約1,200億ドルで、米税関は5月時点で半数を超える850億ドル分を処理したと報告しています。

野村証券の試算では、この還付が日本企業全体の純利益を4,000億〜5,000億円押し上げるとされています。
ただし、その還付をどこに計上するかが同じではありません。

会社関税の扱い利益のどこに入るか
リコー還付 約150億円を受領営業利益に寄与(4〜6月期は+277.8%)
任天堂還付 約3億ドル売上原価の減額=営業利益の中
セイコーエプソン還付(最大200億円の見込み)特別利益や営業外収益の見込み
ブリヂストンコスト −250億円営業利益の中
TOYO TIREコスト −85億円営業利益の中

いちばんはっきり出たのがリコーです。
4〜6月期の営業利益は前年同期比+277.8%の478億円、純利益は370億円と前年同期の3.8倍になりました。
会社は決算短信で「米国の関税措置に係る還付金の計上等により計画を上回って推移した」と説明しています。
日本経済新聞によると、6月末までに受け取った還付金は約150億円です。

ただし、この四半期にはもう一つ大きな要因があります。
4月に中国子会社を売却したことで、営業利益が178億円押し上げられています。
つまり3.8倍の中身は、関税の還付と、子会社の売却益と、円安です。

そしてリコーは通期の予想を据え置いています
第2四半期以降の半導体メモリ価格の上昇リスクや、関税率の見直しに伴う影響を理由に挙げています。
通期の想定為替レートも、第2四半期以降は1ドル150円のまま5月から変えていません。
4〜6月期の実勢159円45銭とは、9円以上の開きがあります。

任天堂は8月6日発表の4〜6月期で、関税の還付およそ3億ドルを売上原価の減額として計上しました。
その結果、売上高は前年同期比−9.5%の減収なのに、営業利益は+150.5%
売上総利益率は32.3%から54.3%へ上がっています。
ただし通期では、関税に関連するコストを約1,000億円見込んでおり、5月に出した予想は据え置いています。

逆にタイヤ2社は、還付を受ける側ではなく払い続けている側でした。
上期の営業利益への影響は、ブリヂストンが−250億円、TOYO TIREが−85億円です。

つまり同じ「トランプ関税」でも、還付を受ける会社と払う会社があり、還付を受ける会社の中でも営業利益の中に入る場合と、営業外に入る場合があります。
「営業利益が何%増えた」という数字だけでは並べて比べられません

まぐ
まぐ

リコーの3.8倍も任天堂の2.5倍も、数字だけ見たらびっくりするな。

チャッピー
チャッピー

せやろ。
けど中身を開けたら、関税の還付と子会社の売却益と円安や。
受け取った期だけの話やから、来期も同じように出るとは限らへん。
リコーが通期を据え置いてるのが、その答えやと思うで。

そして今週は、その円安を止めにいく動きが確定した週でもありました。
前週末の7月31日に実施された15年ぶりの日米協調介入です。

決算とのつながりで見ると、ここが次の論点になります。
TOYO TIREは今回の通期予想で1ドル157円という想定為替レートを置いたうえで、為替が1円動くと営業利益が年間8億円変わるという感応度も開示しています。
通期の営業利益予想は900億円ですから、1円の円高がおよそ0.9%にあたる計算です。
ブリヂストンは通期の想定を1ドル150円のまま据え置いていますが、上期の実績は158円でした。

まぐ
まぐ

決算の数字が円安に助けられてて、その円安を国が止めにいってるってことか。

チャッピー
チャッピー

そういう構図やな。
ただ「だから来期は減益になる」とまでは言えへん。
介入のあとも週の後半には158円台まで戻してるし、金曜は雇用統計でまた円高に振れてる。

まぐ
まぐ

じゃあ何を見といたらええんやろ。

チャッピー
チャッピー

会社が想定レートも感応度も出してくれてるやん。
そこを見れば、円が何円動いたら利益がなんぼ変わるかは自分で計算できる。
ニュースの「円高で業績悪化」より、そっちのほうが確かやと思うで。

今週のテーマ②:同じ業界でも、決算で株価は正反対に動いた

同じことは、業種でひとくくりにできるかどうかにも当てはまります。
今週発表された決算のなかで、高配当株として持っている会社にわかりやすい例がありました。
同じ業界の会社でも、決算しだいで株価はまったく違う動きをします

8月7日、テーマ①でも触れたタイヤ2社が決算を発表しました。
同じ日、同じゴム製品という業種で、株価は正反対に動いています。
TOYO TIREが−14.22%、ブリヂストンが+5.26%でした。

見出しだけを見ると、どちらも悪い話ではありません。
TOYO TIREは「今期の経常利益を6%上方修正」、ブリヂストンは「上期の最終利益が79%増益」と報じられています。
それでも株価は逆を向きました。

会社が開示した資料を読むと、分かれ目がはっきりしています。

項目TOYO TIREブリヂストン
報じられた見出し経常利益を6%上方修正上期の最終利益が79%増益
通期の営業利益の修正940億円→900億円(4.3%の下方修正)据え置き
4〜6月期の営業利益率17.4%→11.0%7.2%→12.8%
上期の営業利益前年同期比−22.2%調整後で+20%
配当135円(据え置き)年間125円(増配)
8月7日の株価−14.22%+5.26%

TOYO TIREの「上方修正」は、経常利益についての話でした。
本業のもうけを示す営業利益は、2月に出した予想の940億円から900億円へ、逆に下方修正されています
上期の実績で見ても、売上高と営業利益は会社の計画に届かず、経常利益と純利益だけが計画を上回りました。
つまり上振れたのは、本業より下の段階です。

4〜6月期だけを取り出すと、TOYO TIREの営業利益率は前年同期の17.4%から11.0%へ下がっています。
ブリヂストンは逆に、7.2%から12.8%へ上がりました。
この日のTOYO TIREの株価は、寄り付き後に4,337円まで上げてから3,598円まで下げています。
出来高は普段の10倍近い737万株でした。

まぐ
まぐ

上方修正って書いてあるのに14%も下げるんか。

チャッピー
チャッピー

そこがややこしいところやねん。
利益には売上総利益、営業利益、経常利益、純利益と段階があって、どの段階の話かで意味が変わる。
今回は経常利益だけが上方修正で、営業利益は下方修正やった。

まぐ
まぐ

見出しだけ読んでたら、逆に受け取ってまうな。

チャッピー
チャッピー

そうなんよ。
ちなみにブリヂストンの「4〜6月期は2.9倍」も、前の年の同じ時期が落ち込んでた反動が大きい。
実力に近いのは調整後の営業利益で、そっちは+20%や。
どっちの見出しも、そのままの意味やない。

まぐ
まぐ

同じタイヤやからって、まとめて考えたらあかんねんな。

チャッピー
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そこが今週のいちばんの学びやと思う。
業種で分けるのは入口としては便利やけど、最後は1社ずつ中身を見んと分からへん。
ブリヂストンも下期は中東情勢で600億円強のコスト増を見込んでる、と自分で書いてるしな。

まぐのメモ:見出しの数字より、会社が出している内訳のほうが正確

今週いちばん腑に落ちたのは、決算の見出しと中身がここまでズレることがある、ということでした。

TOYO TIREは「経常利益を6%上方修正」と報じられて、株価は14%下げました。
ブリヂストンは「4〜6月期は2.9倍」と報じられて、実力に近い数字は+20%でした。
任天堂は減収なのに営業利益が2.5倍になっていて、その中身は関税の還付です。
3社とも見出しと実態がズレていて、しかもズレ方が全部違います

ただ、これは会社が隠しているという話ではありません。
むしろ逆で、どの会社も増減の内訳を自分で開示しています。
為替がいくら、原材料がいくら、関税がいくら、と円単位で書いてあります。
TOYO TIREにいたっては、為替が1円動いたら利益がいくら変わるかまで出しています。

見に行くかどうかの違いだけでした。

高配当株を持つ立場で言うと、気にしたいのはその利益が来年も出せるものかどうかです。
関税の還付は受け取った年だけの話ですし、円安も国が止めにいけば向きが変わります。
利回りは株価が下がっても上がるので、数字が上がったこと自体は判断の材料になりません。

実際、今週は決算を見てから1株だけ買い増しました。
ライト工業(1926)が8月5日に決算を発表し、配当予想の修正が入っていたので、中身を確認したうえで翌朝の寄り付きで買っています。
その記録は別の記事にまとめました

とはいえ、決算のたびに売り買いしなければいけないわけでもありません。
持っている会社が今年払う配当の予定は、この一週間で変わっていないためです。
四半期ごとに一喜一憂するより、こういう内訳の見方を覚えておくほうが、あとで効いてくると思います。

今週のまとめ

W32(8/3〜8/7)の振り返り
① 日経平均は週間+1.93%の65,606円で2週ぶりに反発。
水曜だけで+3.66%(+2,342円)と急伸し、13日ぶりに66,000円台を回復した。
ただしその上げ幅の半分以上は、アドバンテストとソフトバンクGの2銘柄によるもの(約1,243円)。
指数を動かした上位2銘柄は、5日とも同じ顔ぶれだった。
その裏で資金は日替わりに動いており、火曜は半導体が買われて銀行・保険が売られ、木曜と金曜は逆に半導体が売られて繊維・医薬品・食料品が買われている。
先週から続く形が今週も続いた。
SOX半導体は週間+9.24%と大きく戻したが、日ごとには往復しており、半導体の調整が終わったのかどうかは今週のデータでは判断できない。
④ 決算資料には「円安」と「関税」が並んでいた。
リコーは4〜6月期の平均為替を1ドル159円45銭(前年同期比14円91銭の円安)と開示し、ブリヂストンは上期の増益463億円のうち為替の寄与を+200億円としている。
⑤ 米連邦最高裁が2月2日にIEEPA関税を違法と判断し、約1,200億ドルの還付が始まっている。
リコーは還付約150億円を受け取り、4〜6月期の純利益が3.8倍
ただし子会社売却益178億円も含み、通期の予想は据え置き
任天堂は還付を売上原価の減額として計上し、減収なのに営業利益+150.5%
一方でタイヤ2社は還付ではなく払う側だった。
⑥ 同じ8月7日、同じゴム製品でTOYO TIREが−14.22%、ブリヂストンが+5.26%と正反対に動いた。
TOYO TIREの「経常利益を6%上方修正」の裏で、営業利益は4.3%の下方修正だった。
4〜6月期の営業利益率は、TOYO TIREが17.4%→11.0%、ブリヂストンが7.2%→12.8%。
⑦ 7月31日に15年ぶりの日米協調介入が実施され、8月3日に片山財務相が表明した。
円買いの介入としては28年ぶり。
ドル円は週間−0.97%の156円68銭。
週明けに一時155円台前半まで円高が進んだあと、いったん158円台まで戻し、金曜に再び円が買われた。
金曜の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比2万3,000人の減少で、8万人増という予想を大きく下回った。
6月分も+5.7万人から+2.0万人へ下方修正されている。

決算の見出しは、利益のどの段階の話なのかまでは教えてくれません。
今週はそこを開いて見るかどうかで、受け取り方が大きく変わる一週間でした。

よくある質問(FAQ)

Q1. 「上方修正」と発表された会社の株価が下がることがあるのはなぜですか?

利益には段階があって、どの段階の上方修正なのかで意味が変わるからや。
今週のTOYO TIREがまさにそれで、上方修正されたのは経常利益のほうやった。
本業のもうけを示す営業利益は、逆に4.3%の下方修正になってる。
見出しには経常利益のことしか書いてなかったから、そこだけ読むと逆の印象を持ってまうな。
会社が出す決算短信には両方載ってるから、気になったときは短信の1枚目を見るのがはやいで。

Q2. 決算の「営業利益」と「経常利益」は、どちらを見ればいいですか?

どっちも見たほうがええけど、本業の調子を知りたいなら営業利益や。
営業利益は売上から仕入れや人件費を引いた、その会社の商売そのもののもうけ。
経常利益は、そこに受取利息や為替差損益みたいな本業以外の損得を足し引きしたもんや。
この2つが逆を向いてるときは、本業以外で何かが起きてるサインになる。
そういうときこそ内訳を見にいく価値があると思うで。

Q3. 為替介入があると、持っている株にはどう影響しますか?

会社によって向きが逆になる、というのが正直なところやな。
輸出が多い会社や海外で稼いでる会社は、円高になると利益が減りやすい。
逆に輸入が多い会社や内需の会社は、円高のほうが楽になる。
今週の月曜も、介入を受けてトヨタやスズキみたいな自動車株が下げてた。
自分の持ってる会社がどっち寄りかは、決算短信の想定為替レートと為替感応度を見れば見当がつくで。

Q4. 決算シーズンに高配当株を持っている人は、何を見ておけばいいですか?

利益が増えた理由が、来年も続くもんかどうかやな。
今週の例で言うと、任天堂の営業利益2.5倍には関税の還付が入ってて、これは受け取った年だけの話や。
円安も、国が介入で止めにいってる以上、ずっと同じ方向とは限らへん。
配当は基本的に利益から出すもんやから、その利益が一度きりのもんやったら、増配も続くとは限らへん。
株価が下がって利回りが上がっただけ、ということもあるしな。
決算の数字が動いたときは、まず内訳を見てから考えたらええと思うで。

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※ 本記事は相場の振り返りであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
投資判断はご自身の責任でお願いします。

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出典:Yahoo!ファイナンス、日本経済新聞、Bloomberg、株探、yfinance、ジェトロ、野村證券、TOYO TIRE・ブリヂストン・リコー・任天堂の各決算短信および決算説明資料(日本・米国とも8/7終値時点、週間騰落は7/31終値起点)

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