権利落ちで下がるなら空売りすれば儲かる?配当落調整金のしくみと試算

karauri-eyecatch お金の言葉

配当金の権利落ち日には、配当の分だけ株価が下がりやすくなります。
下がると分かっているなら、前の日に空売りしておけば儲かるのでは、と考える人もいると思います。

結論は、儲かる日もありますが、割に合いません。
空売りした人は、権利確定日をまたぐと配当金に相当するお金(配当落調整金)を払うからです。
下がった分の大部分はこの支払いで消え、残るのは制度信用で配当の15%ほど。
実録の21銘柄で試すと、2026年9月29日は制度信用なら合計+9,578円でしたが、そのために約619万円分の株を借りて売る必要があります。
一般信用なら合計−6,893円でした。

実録連載で持っている31銘柄が、2026年9月29日の権利落ち日に実際どう動いたかは、権利落ち日に株価はどれだけ下がる?にまとめています。

空売りとは|株価が下がると利益が出る取引

空売りは、株価が下がると利益が出る取引です。

ふつうに株を買った場合は、買った値段より株価が上がれば利益が出ます。
空売りはその逆で、売った値段より株価が下がれば利益が出ます。
たとえば1,000円で空売りして900円で買い戻せば100円の利益、1,100円で買い戻せば100円の損です。

仕組みは、持っていない株を証券会社から借りて先に売り、あとで買い戻して返すというものです。
売ったときより安く買い戻せれば、その差が利益になります。

「空(から)」は、手元に株を持っていない、カラの状態で売ることから来ています。
持っている株を手放すふつうの「売り」とは、別の取引です。

空売りをするには、信用取引の口座が必要です。
信用取引には、取引所のルールで条件が決まっている制度信用と、証券会社ごとに条件を決める一般信用の2種類があります。
この2つで、あとで出てくる配当落調整金の額が変わります。

まぐ
まぐ

空売りすると、株価が下がったら儲かるってことやな。

チャッピー
チャッピー

そうや。
証券会社から株を借りて売って、売ったときより安く買い戻して返せたら、その差が儲けになる。
ただ、借りてる間はそのぶんのコストもかかるで。

配当落調整金とは|空売りした人は配当の分を払う

株を借りて売っている人は、権利確定日の時点では株主ではありません。
一方で、その株のもとの持ち主(信用取引で買っている人など)は、配当を受け取れる立場にいます。
そこで信用取引では、売っている人(売り方)からその側へ、配当金に相当するお金を受け渡します。
これが配当落調整金です。

楽天証券の場合空売りした人(売り方)が払う額
制度信用配当の84.685%
一般信用配当の100%

制度信用で株を買っている人(買い方)は、配当の84.685%を受け取ります。

84.685%は、配当から所得税と復興特別所得税(合わせて15.315%)を差し引いた割合です。
払うかどうかは、権利確定日をまたいで建玉(空売りしている株)を持っていたかで決まります。
権利付最終日の取引が終わった時点で空売りしていれば、権利落ち日に買い戻しても配当落調整金を払うことになります。

実際にお金が動くのは、配当の支払い時期に合わせて、権利確定日の2〜3ヶ月後です。
権利落ち日に買い戻して終わったと思っていても、忘れた頃に口座から引かれます。

まぐ
まぐ

下がった分を、あとから配当落調整金として払わされるわけやな。

チャッピー
チャッピー

そういうことや。
空売りした人は株主の代わりに配当を払う側になる、と覚えといたらいいかな。

権利落ちの日に空売りしたら、いくら残る?|試算

株価3,000円・中間配当50円の銘柄を100株、権利付最終日に空売りしたとします。
権利落ち日に、配当と同じ50円だけ下がったところで買い戻した場合です。
貸株料は楽天証券の年1.10%で、受渡日を数えて2日分としています。

制度信用一般信用
値下がりで得る差額+5,000円+5,000円
配当落調整金−4,234円−5,000円
貸株料(2日分)−18円−18円
残り+748円−18円
株価3,000円・中間配当50円・100株を権利付最終日に空売りし、配当の分だけ下がって買い戻した場合の内訳。制度信用は値下がりで得る5,000円から配当落調整金4,234円と貸株料18円を引いて748円が残る。一般信用は配当落調整金5,000円を払うので貸株料の分だけマイナス
仮の銘柄による試算/貸株料は楽天証券の年1.10%・2日分

制度信用では、計算の上では748円が残ります。
一般信用では配当の全額を払うので、貸株料の分だけマイナスです。
制度信用で残る748円にも、利益として税金(20.315%)がかかります。

ただ、制度信用で残るはずの分は、次の2つで簡単に消えます。

逆日歩(ぎゃくひぶ)がかかることがある

制度信用で売る人が増えて、貸し出す株が足りなくなると、売り方に逆日歩というコストがかかります。
権利日の前後は、同じことを考える人の売りが集まりやすく、逆日歩がつきやすい時期です。
しかも日数は土日や祝日も数えるので、休みをはさむと何日分もかかります。
たとえば1株あたり5円の逆日歩が1日つくだけで、100株なら500円です。

株価が配当の分だけ下がるとは限らない

配当の分だけ下がるのは、あくまで理屈の上の話です。
2026年9月29日の権利落ち日に、実録で持っている21銘柄を見ると、寄り付きの下げは平均で配当の分とほぼ同じでした。
ただ1銘柄ずつ見ると、21銘柄のうち11銘柄は配当の分まで下がらずに始まり、前日と同じ値段で始まった銘柄もありました。
空売りした側から見ると、株価の下げが配当落調整金より小さければ、その差の分だけ損になります。
くわしい数字は権利落ち日に株価はどれだけ下がる?にまとめています。

まぐ
まぐ

手間とリスクのわりに、残るのはちょっとだけやな。

チャッピー
チャッピー

そういうことや。
みんなが知ってる仕組みで簡単に儲かるなら、とっくにみんなやってるからな。

実録21銘柄で試したら|2026年9月29日は16銘柄がプラス

仮の銘柄ではなく、実録連載で持っている21銘柄(9月末に配当がある銘柄)でも試してみます。
9月28日の終値で100株ずつ空売りし、9月29日の始値で買い戻した場合です。
株数は実録で持っている数ではなく、どれも100株にそろえています。

銘柄値下がりで得る差額残り(制度信用)残り(一般信用)
東海理化電機製作所+9,000円+3,900円+2,981円
日立建機+10,800円+3,144円+1,766円
デンソー+5,250円+2,105円+1,538円
…………
ライト工業+800円−2,611円−3,223円
三和ホールディングス+2,300円−3,903円−5,021円
第一三共0円−4,251円−5,017円
21銘柄の合計+101,030円+9,578円−6,893円

制度信用なら、21銘柄のうち16銘柄がプラスで、合計は+9,578円でした。
この日は相場全体も下げていたので、配当の分より大きく下がった銘柄が多かったためです。
いちばん負けたのは第一三共で、始値が前日の終値と同じだったので、配当落調整金の分がそのまま損になりました。

ただ、100株ずつ21銘柄を売ると、売った株の金額は合計で約619万円になります。
利益はその0.15%です。
空売りをするには、売る金額の30%ほどの保証金を預ける必要があるので、約186万円を用意して1万円足らずを取りにいくことになります。
この計算には逆日歩を入れていないので、逆日歩がつけば利益はさらに減ります。

一般信用では、プラスは10銘柄だけで、相場が下げていたにもかかわらず合計は−6,893円でした。
相場全体が上がった日に当たれば、制度信用でもマイナスになります。

まぐ
まぐ

儲かる日もあるんやな。
でも619万円分も売って、1万円足らずか。

チャッピー
チャッピー

そういうことや。
しかも今回は相場全体が下げた日やった。
上がる日に当たったら、同じやり方でも損が出るで。

株主優待は?|つなぎ売り(優待クロス)

配当と違って、株主優待には配当落調整金のような仕組みがありません。
空売りした人が、優待の分を払うことはありません。

そこで、同じ株を現物で買うのと同時に、同じ数を信用で売っておき、株価の上げ下げを打ち消して優待だけを受け取るやり方があります。
つなぎ売り、または優待クロスと呼ばれます。
かかるのは貸株料と、制度信用なら逆日歩、それに配当の差額です(一般信用の売りは配当の100%を払い、現物で受け取る配当は税引き後のため)。

配当の話とは仕組みが別なので、分けて考えた方がいいと思います。
実録の31銘柄は1銘柄あたり数株しか持っていないので、優待もつなぎ売りも関係がありません。

空売りのリスク|損失に上限がない

株を買った場合、最大の損は株価が0円になったときの買った金額までです。
空売りは、株価が上がり続けると損も増え続けるので、損失に上限がありません。

相場には「買いは家まで、売りは命まで」という格言があります。
株を買って失うのは、最悪でもつぎ込んだお金まで。
空売りは上がり続けるかぎり損が増えるので、それ以上を失うこともある、という戒めです。

怖いのは、逃げたくても逃げられない場面があることです。
夜のうちに買収(TOB)や業績の上方修正が発表されると、翌朝は買い注文ばかりが集まり、ストップ高のまま値がつかないことがあります。
空売りした人は買い戻さないと取引を終えられませんが、売る人がいないので、買い戻しの注文を出しても成立しません。
次の日も同じなら、損は毎日ふくらんでいきます。
買い戻しを急ぐ人の買いがさらに株価を押し上げる「踏み上げ」が起きることもあります。

また、損が膨らんで証券会社に預けたお金(保証金)が一定の割合を下回ると、追加でお金を入れる必要があります(追証)。
期限までに入れられなければ、強制的に決済されます。

まとめ|配当権利落ちを狙った空売りは割に合わない

① 空売りした人は、権利確定日をまたぐと配当落調整金を払います。

② 楽天証券では、制度信用で配当の84.685%、一般信用で100%です。

③ 株価3,000円・配当50円・100株の試算では、残るのは制度信用で748円、一般信用では−18円です。

④ 実録21銘柄100株で試算すると、2026年9月29日は制度信用で+9,578円(約619万円分を売って0.15%)、一般信用で−6,893円でした。

⑤ 制度信用で残る分も、逆日歩や株価のぶれで簡単に消えます。

⑥ 株主優待には調整金の仕組みがなく、つなぎ売りは配当とは別の話です。

権利落ちで株価が下がるのは、配当の分が株価から配当へと移るだけです。
その下げを空売りで取ろうとしても、配当落調整金がほとんどを持っていき、残りもコストと値動きのぶれで消えやすくなります。
儲かる日があっても、大きなお金と上限のない損のリスクを背負って、手に入るのはわずかです。
実録21銘柄の例なら、相場全体が1%上がる日に当たっただけで約6万円の損になり、うまくいったこの日の約6回分が1回で消えます。
配当が目的なら、権利落ちの日は何もしないのがいちばん手堅いと思います。

まぐのメモ

損が青天井になる取引は、配当をもらいながら長く持つやり方とは向きが逆やと思ってる。

権利落ちの日は、口座の数字が下がっても何もせえへん。
配当が入るのは2〜3ヶ月後で、それまでは待つだけや。

よくある質問(FAQ)

Q1. 権利付最終日に買って、権利落ち日に売れば得しますか?

得しにくいと思うで。
配当はもらえるけど、そのぶん株価が下がって始まることが多いからな。
しかも配当には税金がかかるから、差し引きで見たら残るものは少ない。

Q2. NISAの口座で空売りはできますか?

できへんで。
NISAの口座で買えるのは現物の株や投資信託だけで、信用取引は対象外や。
空売りは信用取引の口座でしかできへんから、NISAとは別の話になるな。

Q3. 配当落調整金は、確定申告でどう扱いますか?

配当としてやなく、株の売り買いの損益として扱われるで。
空売りした人が払った配当落調整金は、株を売った収入から差し引かれる。
特定口座で源泉徴収ありにしてたら、証券会社がまとめて計算してくれるはずや。

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出典:楽天証券「信用取引の基本ルール」(配当金相当額・貸株料)。
逆日歩=SMBC日興証券・日本証券金融の解説。
つなぎ売り=楽天証券の解説。
配当落調整額の税の扱い=国税庁「所得税基本通達36・37共-23」。
NISAと信用取引=SBI証券「よくあるご質問」。
試算は仮の銘柄によるもので、手数料・逆日歩・税金の扱いは証券会社や条件によって変わります。
この記事は仕組みの解説であり、信用取引や特定の銘柄の売買を勧めるものではありません。

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